時事随筆

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事務総長のコメントは現状肯定ですね。

Note to Correspondents: In response to questions on the meeting between the Secretary-General and Prime Minister Abe of Japan | United Nations Secretary-General

The Secretary-General agreed that this is a matter to be solved by an agreement between Japan and the Republic of Korea. The Secretary-General did not pronounce himself on the content of a specific agreement but on the principle that it is up to the two countries to define the nature and the content of the solution for this issue.

この場合、himself は自然に、前の文にかかるべきでしょう。従って、自身がコメントした「同意する」とは何に対してか?を説明してると考えるべきです。
国連事務総長は、(慰安婦問題と呼ばれる問題)日本と韓国の二国間の合意によって解決されるべきであることに同意した。特定の合意内容についての同意ではなく、問題解決の内容と性質は二国間で決められるべきものという原則に対する同意であると述べた。」と訳すのが自然ですね。


特定の合意内容の是非に対しては賛否いずれも言及しないが、二国間で合意を交わして解決するものだという原則には同意をしていると、いう事ですね。


あくまでですが。個人的には、”「被害者に対する名誉回復や補償、再発防止が十分ではない」などとして見直しを勧告する報告書”の存在を批判する日本側に対してと、慰安婦像の撤去を前提とした合意そのものに関する韓国の反応に対して、特定の合意内容には同意していない、が掛かっているのだと思います。つまり、日韓両国いずれの立場にもたたないと説明してるもので、「既に二国間には合意が存在している」という現状を踏まえれば、合意は二国間でなされるのが原則というのは、現状の肯定以外の何かだと解釈するのは難しいと理解しています。


このコメントを歓迎したとまで意訳する事に違和感を覚える事は理解できますけど、
「グテレス氏は慰安婦問題が日韓の合意に基づいて解決されるべき問題であるということに賛成した。特定の合意内容については触れなかった」
国連総長、慰安婦合意「内容触れず」 首相との懇談で :日本経済新聞
慰安婦合意「内容触れず」 国連総長、首相との懇談で - 共同通信 47NEWS
とのみ書くのは、前後の文脈を抜いた上で更に酷い解釈をされかねない訳ではないかと危惧しますね。記事からは、読者が自分で解釈可能な情報は抜かれています。

2015年末に慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した日韓合意を巡っては、国連の拷問禁止委員会が「被害者に対する名誉回復や補償、再発防止が十分ではない」などとして見直しを勧告する報告書を公表し、日本政府が反論している。

コメントによると、グテレス氏は会談で合意の中身には触れず、「問題の性質や解決方法を決めるのは、日韓両国に委ねられているとの立場だ」と説明している。

慰安婦問題で国連総長「日韓合意で解決すべき」 : 国際 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
読売はさすがにクオリティーペーパーというべきで、前後にあった事象をちゃんと説明したうえでのコメント紹介なので、政府の意訳については批判的でありながらも読者に解釈を委ねる事が出来ています。


その後

Regarding the report of Special Rapporteurs, the Secretary-General told the Prime Minister that Special Rapporteurs are experts that are independent and report directly to the Human Rights Council.

で、「特別報告者に関し、特別報告者は独立した専門家であり、人権委員会に直接報告するものである、と首相に伝えた。」
は、合意の詳細について同意もしないし反対もしないという立場を表明したうえで、合意の詳細について触れたコメントは「国連の立場を代弁しない」と述べたものでしょう。

以上を見ると外務省の

  • 「同合意につき賛意を示すとともに,歓迎する旨述べました。」
  • 「人権理事会の特別報告者は,国連とは別の個人の資格で活動しており,その主張は,必ずしも国連の総意を反映するものではない旨述べました。」

は、意訳されているとはいえ間違いがあるとまでは言えるものではないのではないかという印象を持ちます。同意を賛意と考える事を訳の基本にすると、そういう読み方が出来なくもない。やりすぎてないかとは思いますが、「食い違いが明らかになった」、というのは露骨な誘導です。


しかしながら、あまり気持ちのいいもんではないことも確かで、韓国サイドからは厳しい批判があったのでしょう。「どっちの肩も持ちたくないし、持ってない!ギャアギャア言うな!言わせるような事をするな!うっとおしいんじゃ!」と日韓両国に釘を刺した様に私には見えていますね。どう低く見積もっても、二国間合意にたいして国連が公式に文句を言う立場は取らない、ということが明らかになったものであるという私の所感はかわりません。まして、国連が外務省のコメントに批判的なコメントを返したのではないでしょう。