時事随筆

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国際組織犯罪防止条約、批准可能な日本の「留保」って?

サヨク論法の骨格は重要な所を隠ぺいして、都合のいい主張を組み立てて、無知な人を誤魔化すという事にある訳ですね。

anond.hatelabo.jp
この記事も似たようなもんです。外務省が嘘つきだと言いますが、ご自身も詐欺的です。

米国の留保とは何であるか

留保が可能であるのに、決議を理由に留保しないというのは嘘だと言う。留保とは、どの様な条件において可能なのでしょう?

ウィーン条約法条約第十九条に従い、条約の趣旨及び目的を損なわない限度であれば、本条約に対し留保を付すことは、御指摘のとおり、可能であります。

留保についての骨子というか、絶対的な前提条件は「条約の趣旨及び目的を損なわない」という事でしょう。

件の増田で訳されたのは理念の部分までです。以下、詳細があります。

(2) The United States of America reserves the right not to apply in part the obligation set forth in Article 15, paragraph 1 (b) with respect to the offenses established in the Convention. The United States does not provide for plenary jurisdiction over offenses that are committed on board ships flying its flag or aircraft registered under its laws. However, in a number of circumstances, U.S. law provides for jurisdiction over such offenses committed on board U.S. -flagged ships or aircraft registered under U.S. law. Accordingly, the United States will implement paragraph 1 (b) to the extent provided for under its federal la
(3) In accordance with Article 35, paragraph 3, the United States of America declares that it does not consider itself bound by the obligation set forth in Article 35, paragraph 2."

拙訳:
(2)合衆国は、条約に定められた犯罪に関して、第15条第1項(b)が定める義務の一部を適用しない権利を留保する。 合衆国は、国内法の下で登録された航空機または、合衆国旗を掲げる船上で犯された犯罪に対する全面的な管轄を規定していない。 しかし、多くの状況において、合衆国は、法に基づいて登録された米国の艦船または航空機上での犯罪を管轄することを規定している。 これにしたがい、合衆国は、連邦法に規定されている範囲で第1項(b)を導入する。
(3)第35条第3項に従い、合衆国は、第35条第2項に定める義務に拘束されるものとはみなさないと宣言する。


意訳すると、船籍が米国の艦船および航空機で、シージャックないしハイジャックがあった場合、殆どのケースで連邦法で対応できるが、一部は適用できない、そのケースを除いて条約に従うという事でしょう。ここで重要なのは、この留保宣言が「条約の趣旨及び目的を損なわない」という事なのでしょう。これが一つ目に抑えておくべき事。

条約の目的とは何であるか?

アメリカの留保が、どんなケースか?ってのは、ここからは分かりません。ですが、その留保を求めるものが「条約の本旨および目的を損なわない範囲」であると認められたという事でしょう。
では、次に湧いてくる疑問は、条約の本旨および目的を損なわない範囲とは何か?という事になるのでしょう。

組織的な犯罪集団への参加の犯罪化(5条)

  • 締約国は、次の一方又は双方の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
    • 物質的利益を得ることに関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの
    • 組織的な犯罪集団の目的等を認識しながら、組織的な犯罪集団の犯罪活動等に積極的に参加する個人の行為
  • 締約国は、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し、若しくは援助し又はこれについて相談することを犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。

この立法措置まで要求している5条こそが、条約の核になると言えるのではないでしょうか。これが二つ目に抑えておくべきことです。

日本が求める留保とは何か?

5条はテロ等準備罪(共謀罪)の新設を明確に求めています。それを行う組織犯罪処罰法改正案を廃案として、留保を求めるものとは何でしょうか?
ちょっと話は逸れますが
www.afpbb.com
先日、この様な犯罪がありました。これ、日本では改正案なくして、いかなる法律で裁くことが可能なのでしょうか?私の理解では、これを違法として捜査活動を行えないが為に共謀罪の新設が必要という事でしょう。共謀罪の新設は国内法の理念でできないので、5条を留保する。これは明らかに、「条約の趣旨及び目的を損なう」のではないでしょうか。

まとめ

この記事を纏めましょう。

  1. 留保についての前提条件は「条約の趣旨及び目的を損なわない」という事
  2. 米国の留保宣言は、「条約の趣旨及び目的を損なわない」範囲ではないかと思われる
  3. 共謀罪新設を行わないで宣言する留保とは、「条約の趣旨及び目的を損なう」ものとしか思われない


以上の事を踏まえれば、外務省の説明は不足があったとしても、特段嘘があるものには見えないですね。それを嘘だと断定する事や、その過程で骨子になる部分を避けている辺りは、かなり詐術的な増田だなと思います。


改正法案には賛成反対、それぞれの立場があり、それぞれの主張がある事でしょう。
政府がいう、共謀罪の新設は条約の批准に必要で留保は付さないという説明は、筋の通った主張で納得が出来ます。一方で、トンカチ買ったら逮捕だーとか言われても・・・・『なんだこのアホは消えて失せろよ、歳費の無駄だわ』、としか思わないんですね。そうではないですか?


審議拒否しかできない無能を極めてしまった民進党を含む野党や、反対派の法律家の皆さんに求めてるのは、トンカチがどうとかではなく、共謀罪新設をしない場合に日本が国際社会に留保を宣言するのは、TOC条約のいずれの部分なのか?それは条約の目的を損なわない範囲であるのか?を説明したうえで納得させてほしいのです。興味を持ってニュースなどを追っていますが、今のところ、疑問に答えている記事などを見た事はありません。

私を含むなんだか良くわからん(絶対的な確信を持たない)人は、問題の本質や解決されるべき疑問点を見失うことなく、共謀罪の新設が必要かどうか?その議論に野党は役に立っているのか?を見て欲しいですね。私も未だに、納得のいく答えを見た事がありません。必要性は分かるので賛成してるけど、反対派の主張が戯言だと思われてるまま終息するのも、なんとなく釈然としないのですが、、、中身のある主張は、もうこのまま見れそうもないですね。共謀罪の新設はしなくても、5条の留保が可能であって問題なく批准できるのであれば、反対派の意見も通りだすのではないかと思いますが。それが分からないで、トンカチ買ったら逮捕!で賛意が集まると確信するほど、バカでもありますまい?


さて、更に疑問としては、

本条約については、既に平成十五年の通常国会におきまして、留保を付さずに締結することにつき国会の承認をいただいております。

というなら、共謀罪の新設は問題とならなかったのか?留保を付すことについて議論はなかったのか?それが出来ないから、留保なしで締結という事になったのではないか?その時、民主党は何をしていたのか?などなど色々と疑問が沸き上がりますが、まぁ、この辺りで。

追記

id:sgo2 氏のブコメより
ameblo.jp
野党の議員にもしっかりと議論できる人が居る様で。幾つかの疑問が解消され参考になりました。長いですけどw改正に賛成の立場からすると、自説の補強にはなりました。願わくば反対派の政治家からも、どのように留保を付すのか、それは国際的に受け入れられる議論なのか、を論理的に提示してほしいものです。


toulezure.hatenablog.jp
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