時事随筆

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日本では「高度教育を受けた高機能人材」は排除されてない

koshian.hateblo.jp

掛け算すら出来ない人は相変わらずですね。
長谷川豊と維新の会を焼き殺さねば日本が滅亡する - 狐の王国


さて、日本が高度教育を受けた人材を排除してるかどうか?個別企業の事例の前に、マスの話をしましょう。概ね30分程度調べて書いた記事です。
漏れがあるとしたら、労力の問題という事でご容赦を。

内閣府経済社会総合研究所による「大学院卒の賃金プレミアム―マイクロデータによる年齢-賃金プロファイルの分析― 」を参照します
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis310/e_dis310.pdf
文献は、まず要旨を読んで、結論を読み、必要な情報を中から拾うのが読む際の基本作法です。
という訳で要旨

日本では大学院に進学することの経済的価値に疑問が投げかけることも多かったが、
大学院卒が収入面でのプレミアムを持つことが分かった。

で、結論

ここでの分析は大学院進学が少なくとも平均的に勤続を重ねる場合は、博士前期課程(修士)卒業者においても博士後期課程(博士)卒業者においても、
一定の賃金プレミアムを持ち、生涯賃金収入において学部卒との間に差が生じることを示している。この結果を見る限り、大学院教育は一般社会においてある程度の成果を生み出していると言えよう。

とあるので、それを示すデータがあるという事になる。P17以降にグラフがありますが、身も蓋もないレベルで賃金に格差があります。では、諸兄にお伺いしたい。高度教育を受けた人材は排除されているというほどに一般的に不遇と言えるだろか?


別の文献も当たってみたい。
「大学院教育と人的資本の生産性」
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/11j072.pdf

これも序論から、文献で書いてあるべきことを拾ってみましょう。

分析結果の要点を予め整理すると以下の通りである。
①性別、年齢、学歴、雇用形態を説明変数として対数賃金(年収)を説明するシンプルな回帰分析によれば、学部卒と比較した大学院賃金プレミアムは約 20 %であり、米国、英国の先行研究の結果とおおむね同程度の大きさと言える。

なるほど、読みませんが信用できる海外の先行研究があるのですね。であれば、猶更に信用性は高いでしょう。

②雇用者に関しては、女性の大学院賃金プレミアムが男性よりも大きい。

③雇用形態別に見ると、男性の自営業主において大学院卒賃金プレミアムが非常に
大きい。
④学部卒の雇用者は 60 歳を超えると極端に賃金が低下するが、大学院卒の場合には高齢期の賃金低下は極めて緩やかである。また、大学院卒は高齢になってからの有業率低下も学部卒に比べて小さい。つまり、大学院卒業者は相対的に高賃金で、かつ、長く労働市場にとどまる傾向がある。
⑤以上をもとに大学院教育投資の私的収益率を概算すると 10 %を超える高い数字となり、知識のスピルオーバー等の外部効果を考慮した社会的収益率はさらに高い可能性がある。

阿呆の戯言を否定しておくだけのつもりでしたけど、自分にとっても勉強になりました。この点は感謝したいですね。
女性にとって大学院進学が価値が高い事、また高齢に至ってから専門性の有無で、労働力としての需要に格差が生まれるという結果が出ている事は素晴らしい事です。


これも結論は分かったので、分析手法等は読まず、17P以降のグラフの結果だけを見て筆者の調査結果を見てみる事にします。するとどうでしょう。生涯年収で4000万もの差が出ています。高度教育を受けた人材は排除されているというほどに一般的に不遇と言えるだろか?


二つの文献を見たので、まぁ傾向として、収入に差が出る傾向が一般的にはあるという事になるでしょう。これは私の体感にも近い数字です。
収入が多いということはそれだけ出世しているということでもあるでしょう。例えばですが、個別企業の事例で行くと、日立では博士卒でないと役職がつきにくい傾向にあるという話はよく聞きますし、研究所では主任以上のポジションになろうと思うと博士号が必要になるので、必然的に論文博士などで学位を狙う事になるとも聞きます。
電機メーカーの負組社員が質問に答えます3 | このブログはすべてフィクションです。

私の知っている小さな(200人くらいの規模の)IT企業では情報系の博士取得者が10人以上いて、彼らの待遇は決して悪くない。むしろ他の人が羨む待遇でしょう。週に1度出社してきて仕事するだけで、他の社員よりは良い給料だったりする。Google日本法人に採用される(内定を貰う)様な新卒の学生は、東京大学の情報系大学院卒で圧倒的に優秀でした。
[追記]


Googleではやってないってことですけど、私は(血糖値なんかは測りませんが、社員の成果や業務を数値化して客観的に評価する様な)そういう厳しい管理をしてる会社を知っています。
しかし、そこの社員もやはり高学歴ばかりです。
[追記了]
数値で完全に管理される厳しい評価を受けることが出来るのも、またそれに耐えてレイオフを回避し続けることが出来るのも、東京大学情報系でも屈指と言われる程、高い能力をもってる人間だけだという事です。ちなみに私が良く知ってる外資系企業では、このような数値による評価をして下位5%を毎年クビにします。あなたは数年以上にわたって四半期ごとに行われる評価で、下位5%に入らない自信がありますか?このような環境で生きている高度教育を受けた人材は排除されているというほどに一般的に不遇と言えるだろか?



もちろん文学博士が好待遇を受けているか?などは私には分からないですが、しかしながらすべての学位に社会的需要がある訳ではないでしょう。どの学位を取得して社会に出るのか?というのは個々人の人生設計の問題です。博士を取得しても、どうしようもない馬鹿は一定数はいるものですし。
togetter.com


一般的な傾向としては、「高度教育を受けた高機能人材」は排除されてないと断言できる数字がすでにある、と言えますし、経験的にもそう言えますね。博士取得までの経費の問題もあるでしょうが、優秀と言われる学生は、だいたい学振を貰ってたり、奨学金免除を得ている事が多いので、数千万もマイナスになる事はあまりありません。

かつてギリシア時代に興った大学の原型であるアカデメイアには

なんて、阿呆な事を言い出す前にググれよ、と言いたい。認知バイアスで、思い込み補正をかけまくったまま適当な事を言うのは、これから進学を控えている青少年の害にしかならないのでやめて欲しい。

id:liveall 「データをとって、きちんと考える」ことが、何より大事。

ですね。


まじめに勉強して取得した学位は、生涯に渡って他人との競争を制する上で絶対的な武器になりうる、ということを若い皆さんは覚えて帰ってください。研究によって培った論理的な思考能力があれば、思い込みで適当な結論を導くような愚かなことも、思い込みで間違った計算結果をもとに斜め上の批判を展開する事も決してしないでしょう。それだけでも、仕事をしていく上では価値があります。