時事随筆

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何故、日本は187か国も加入している「国際組織犯罪防止条約」に加入できてないのか?

Google検索から流れてこられる方が多い様ですね。
私自身も、共謀罪の新設と条約の批准については「それを必要」とするサイドの合理的な説明は見ていても、その反対意見に納得のいくものを見た事もない状態です。一連のシリーズは、調べつつ私の疑問を整理している記事なので、皆さんの賛否を考える際に一つの意見として読んでもらえれば幸いです。


business.nikkeibp.co.jp
5Pも記事がありながら、相変わらずだが馬鹿は感情でしか物を考えられない様なので、自分の為でもあり疑問点を整理しておきます。


そもそもこの条約がいかなるものか?と言う話なのですが、
国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約 - Wikipedia
に纏められている所によると、

組織的な犯罪集団への参加・共謀や犯罪収益の洗浄(マネー・ローンダリング)・司法妨害・腐敗(公務員による汚職)等の処罰、およびそれらへの対処措置などについて定める国際条約

2016年10月現在、署名国は147、締約国は187

という事ですね。是が非でも、わが国でも加入したいしすべきでしょう


なぜ日本が加盟できてないのか?という点については、法務省:組織的な犯罪の共謀罪に関するQ&A で法務省によって説明が加えられていて

この条約は,国際組織犯罪対策上,共謀罪などの犯罪化(注)を条約加入の条件としています。しかし,我が国の現行法上の罰則には組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為を処罰する罪がない

とあります。では、ここで加盟条件となっている第五条を見てみます。再びWikiを参照すると

  1. 締約国は、次の一方又は双方の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
    1. 物質的利益を得ることに関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの
    2. 組織的な犯罪集団の目的等を認識しながら、組織的な犯罪集団の犯罪活動等に積極的に参加する個人の行為
  2. 締約国は、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し、若しくは援助し又はこれについて相談することを犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。

という事であり、確かに共謀罪の制定を要求している。つまり、条約を素直に読めば、政府答弁である共謀罪がないから加入できないというのは正しいでしょう。


一方で、日弁連は反対の立場を取っており、以下に纏められている。
日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:日弁連は共謀罪に反対します(共謀罪法案対策本部)
全てをくまなく読むほどの時間的余裕はないので、上記ページなどを眺めてみる。共謀罪が国内法の法体系を変えるというような事を言っていますが、今はあくまで「何故に加入できてない?」ということを知りたいだけなので無視をします。で、日弁連としては、条約に加入せず、日本だけはスパイ・テロ天国でいいと考えてるのか?弁護士ってのは、そこまでクソな連中なのか?という事になるんですが、そうではなく、「新たな共謀罪立法なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准することはできます」というスタンスを取っているようです。


日弁連共謀罪を成立させずとも加入国が認めれば加入できるといいます。では、締約国は187のうちで、何か国が共謀罪立法なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准しており、加入を認められているのか?そうした例と、それを実現する為に必要な法的な手段を提示すべきでしょう。それについても一応の例は示しています。

  1. 新たな共謀罪立法を行ったことが確認された国は、ノルウェーなどごくわずかです。
  2. アメリカ合衆国は、州法では極めて限定された共謀罪しか定めていない場合があるとして国連越境組織犯罪防止条約について州での立法の必要がないようにするため、留保を行っています。
  3. セントクリストファー・ネーヴィスは、越境性を要件とした共謀罪を制定して、留保なしで国連越境組織犯罪防止条約を批准しています。

ここで分からないのは、共謀罪の成立なく日弁連の提案する国内法の解釈のみを訴えて加入できている国はあるのか?という事ですね。これは、簡単にググってみましたが分からない。素直に参照部分を見ると、共謀罪がなかった国はサヨクの理想郷北欧の国ですらも立法を行っているという事、また条件付きの共謀罪を制定することで加入しているという事です。日弁連が本当に我々を納得させたいのであれば、共謀罪の存在無くして現存の国内法のみで加入できた例を示し、道筋を提案すべきでしょう。論文でもなんでもそうですが、もっとも重要な主張の要旨部分にそれがないということは、187の締約国は既に共謀罪を持っていたか、新たに制定したかであるとしか考える事は出来ません



すっきりしないとことはあるし、引き続き調べる必要もありそうだし、続報をまとうとは思いますが、現状では187の締約国が日本の加入を認めていないのは共謀罪がないからであって、同時に日弁連の唱える国内法の解釈では締約出来ていないという事が事実として横たわっている事だけは確かですね。どうすれば日本は条約の締約国になれるのか?を考える事が共謀罪の成立については核であろうと思います。私としても加入できれば、ひとまずは共謀罪の成立がなくとも納得は出来ますが、現状は上述の通りで共謀罪の成立なく加入は出来ないとしか読み取れない事実が横たわっています。


最後に、「国際組織犯罪防止条約」に加入してない日本でやりたい放題であろう組織犯罪を一つ想像してみましょう。犯罪収益の洗浄(マネー・ローンダリング)を犯罪化することが共謀罪の一つの要点になるようですね。例えば、マネーロンダリングをして逮捕された北朝鮮工作員の例があります。
www.sankei.com
こうした犯罪が、口座の不正操作などの既存の法律に抵触してなくて立件できずに見逃してしまう事がなくなる事が期待できるなら素晴らしい事だと思いますね。逆に、北朝鮮はかなり困る事になるでしょう。

北朝鮮と言えば、最近、ランサムウェアの開発元である可能性が疑われたり、銀行への大規模なサイバーテロが疑われたりしています。これら犯罪への日本での関与を防ぐためにもやはり、共謀罪の新設は威力を発揮します。以下は、それを説明した記事です。
toulezure.hatenablog.jp



テロ等準備罪がなかった場合に、どのようなケースが想定されるか?考えてみました。あわせてどうぞ。
toulezure.hatenablog.jp

留保することが可能だと言う向きについて疑問を書きました。丸山議員の記事は一読に値すると思います。
toulezure.hatenablog.jp