時事随筆

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貧困層ではなく、年収500万以上の有権者ほどトランプを支持している理由とは何だろう?

トランプ勝利:日本人は胸に手を当てるべきcloudseye.wordpress.com

この記事に見られるような、トランプが大統領に選ばれた事を貧困層の逆襲と見る向きは強いのだが、それは違うようです。
togetter.com
同様にしてPCの煩雑さが支持を深めたというのも違う気がしまが、隠れトランプ派を増やす要因の一つにはなったと思います。実際のところ、事後明らかになる数字をみるにつけ、トランプ支持者は我々が思うよりも遥かに合理的な判断をしているように見えます。従って誤った分析から断定されている、トランプによってアメリカが終わるという分析や負の時代に入るという論調も誤っていると思えるのです。また、そうした論調の記事は、悉くと言っていいけれどトランプの政策を無視している事も、「トランプを支持したのは貧困層で、アメリカは負の時代にはいる」と言う結論が思い込みにすぎないのでは?という印象を強める理由となっています。

トランプの支持者は年間500万以上を稼ぐ中間層以上

www.theguardian.com


まず、トランプ支持者の実態を知る必要があります。この記事の末尾にこうあります。

Broken down by income bracket, 52% of voters earning less than $50,000 a year ‐ who make up 36% of the electorate ‐ voted for Clinton, and 41% for Trump.But among the 64% of American voters who earn more than $50,000 a year, 49% chose Trump, and 47% Clinton.

拙訳で恐縮ですが、英語の得意でない人の為に和訳します。
所得による内訳を見てみると、年収500万円未満の投票者の内52%( 投票者の36%を構成)はクリントンに投票をし、41%がトランプに投票をした。一方で、有権者の64%にあたる年間500万以上を得ている投票者は、49%がトランプに投票し、47%がクリントンに投票した。
という事です。そもそも年収500万未満の貧困層は、主流ではなく、彼らだけでは大統領を決める事すら出来ないのです。レッドネックの反乱という見方だけでは、トランプが勝った事は説明できません。

何故、中間層以上がトランプを選んだか?

貧困層がトランプを選んだ、というような分析が誤っている事は
lullymiura.hatenadiary.jp

でも、三浦先生も述べておられる通りです。具体的に何がアメリカの中間層以上に受けたのでしょうか?

jp.reuters.com

トランプの主要政策については、上記の記事があります。

オバマケアの廃止

トランプはオバマケアの廃止を約束し代わりにメディケイドの拡充をすると言っています。これはアメリカの富裕層にとっては大きかったのではないかと思います。


この事を理解するには、アメリカの医療保険制度を知る必要があります。アメリカには皆保険制度はありませんでした、その代わりに細分化された民間の医療保険がありました。

アメリカの医療制度って本当にヒドイ? : 心や体の悩み : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

小町ですが、参照します。アメリカの医療を要約すれば、金のある人にとっては天国ですが中途半端に金がなければ地獄って事です。全米トップレベルの医師から、良い医療を優先的に受ける事が出来る高額保険の費用は月額10万以上です。この保険をアメリカでは企業が従業員に与えます、当然ですが、このような良い保険が得られるのは良い教育を受けた大卒者です。一方で、中小企業が提供するような半端な保険ではカバーされる範囲が狭く、十分な医療を受ける事ができません。中には歯の治療すら出来ない人がいるのです。本当に金がなければ救済措置はあるのですが、生活保護と同様厳しい条件があります。小町の回答者にも見られますが、良い職業=最高の医療保険を得た人々は、厳しい競争を得て勝ち取った権利を努力の結果と考えています。従って、彼らにとってオバマケアは不要であり、その負担は余計な増税でしかないのです。それが廃止されるというトランプの公約は良い印象だったはずです。一方で拡充が約束されていたメディケイドは、老人福祉の側面の強い制度です。リタイア後の不安を取り除く制度は彼らにとっても必要なものですから歓迎されたでしょう。

大幅減税

法人税最高税率を現行の35%から15%に引き下げるなど大規模減税を柱とする経済政策を発表しています。中産階級所得税を減税するとも言っていますが、一方で軍事費や医療・年金といった大きな割合をしめる歳出は削減しないとも言っています。その整合性については、まるで民主党政権の様に取れないのではないか?という疑問がありますが、日本でも民主党が支持された様に支持を集める理由になったはずです。また増税すると言ってる富裕層に対しても、実質的な減税になるでしょう。稼いでる人ほど、トランプを大統領にすることにメリットを感じていたはずです。
markethack.net

でも、、、結局、おれたちなんだよね、社会保障受給者たちを喰わせているのは。トランプは現在の最高税率39.6%を、33%に下げると言っている。相続税も全廃だ。ところがヒラリーだと最高税率が43.6%に引上げられるだけでなく相続税65%って、これ一体、何のつもり?国は、そこまで裕福層から奪う権利を持っているの?


という感情がむくむくと湧き上がってくるわけです。これが裕福層のホンネ。

こうなるのは自然だと思います。

その他

アメリカ国民の税金を使って世界の警察として戦争をしたり軍事行動をとる事を、特に利益にもならない場合には止めたいというのはトランプ政権に限らずオバマ政権でもやってきたことで、孤立主義を深めていく事自体はクリントンが大統領となっても変わらなかったでしょう。しかし、TPP撤退を示唆するなど、より孤立主義保護貿易を強く出していた事もも評価の対象になっていたと思います。アメリカには国内に予算が必要な懸案事項が山の様にあるのですから。

zasshi.news.yahoo.co.jp

他にはトランプ政権誕生による株式市場の混乱を利用して儲けたいとか、最高裁判事がリベラルに寄ることが苦痛とかそういう観測もあるようです。

トランプ政権も案外悪くないのでは?

政策を見るとそう思う部分もあります。日本の鳩山政権の様な無能政権ではなく、レーガン大統領の様に周囲に優秀な人材を配して、安定した成長を実現するかもしれません。希望的観測ですが、就任後は財を成した優秀な起業家として冷静な判断を下すことを期待したいですし、また日本の政治家はトランプ政権の新孤立主義を好機として活かしてほしいですね。特に国防面で。もし民進党が、相続税なし高額所得者の減税を打ち出せば、2年くらい政権を持たせて、その間に相続の問題を・・・とは私ですら思いますよ。